治療目標

「自ら治ろうとする力」を後押しする

 病とは、心身内部の健全な機能や仕組みがいくつかの要因によって異状をきたし、不快な症状を引き起こすことをいいます。 

 そして病が治るのは、生まれながらに備わっている「回復力」もしくは「自己治癒力」が働いて、この異状を修正してくれるからなのです。

 しかし、この回復力が存分に発揮されないと心身のメカニズムの狂いは日を追うごとに大きくなり、遂には自力での回復が困難になります。つまり病の慢性化です。

 当院の治療は、鍼灸施術とセルフケア・摂生により、固定した病状が快方に向かって変化するきっかけを与え、自分の力で病を克服できるように手助けするものです。


 自分の体調との向き合い方・病との付き合い方を知る

 積極的に治療に臨み、治療者の助言や指摘に耳を傾け、自分の心身の状態に関心を持って過ごしていれば、生活上の出来事と自分の行動や感情が症状の軽減・悪化と密接に関係していることに気付くはずです。

 人付き合いや仕事でのストレス、暴飲暴食や夜更かしなどの不摂生、気候・季節の変化など、日常そのものが病の要因であることが実感されれば、自分なりの「症状との付き合い方」や「苦痛を最小限に抑える対処法」が自ずと身につきます。

 症状や苦痛を自分でコントロールできるようになることは、病に振り回されない生活に向けての大きな前進です。

 要するに、病を患う自分を客観視することが重要なのです。理不尽に襲う病を恨んでマイナスの感情にとらわれたままでいることは、それ自体が大きなストレスであり、治癒の足かせとなってしまいます。

 伝統医学は「
生きている限り否応なく消耗させられていくその弱さはひたすら保養されるべき」と教えており、治療に積極的に参加することは病と適切な距離を保って向き合うための訓練にもなります。



根深くもつれた心身内部の乱れをととのえる

 発病と治癒の過程は、①心身の疲労が蓄積し、健康を保つ仕組みが乱れはじめて不調を感じるものの、自分をいたわる生活を心がけることで自然と回復する、②不調を自覚しているにもかかわらず、心身に負担をかける生活を改めないままでいると、病状(病の構造)がこじれて慢性化していく、慢性化した病から自力で治癒することが難しいため、専門家による正確な診察に基づいた治療と保養が必要になる④適切な施術と生活改善の効果を積み重ねていき、心身の乱れたメカニズムがととのって「治ろうとする力」が充分働くようになれば、 施術を受けなくても自然と快復していく、という経過をたどります。 

 病の構造(内部の生理機構の狂い)自体が単純であれば、激しい症状であっても治りやすいものですが、病がこじれてしまっている場合は、たとえ軽い症状でも解消されにくく、また再発もしやすいものです。伝統医学ではこれを「病が浅い、深い」と表現します。 

 例えば同じ痛みの訴えでも、病が浅ければ痛むところに施術するだけで簡単に治ってしまうものですが、病が根深くこじれた状態である〈心身内部のメカニズムの異常〉から発する痛みは治りにくく厄介なのです。

 この〈心身内部のメカニズム〉は伝統医学では「五蔵」と呼ばれ、五蔵を調整するためには人体に張り巡らされた「経絡」や「ツボ」というネットワークを伝統医学理論に基づいて運用することが求められます。

 西洋医学の検査で異常は見つからないのになんとなく体調がすぐれない不定愁訴やなかなか治癒しない慢性症状の裏には、ほとんどの場合「内部で起こっている」「複雑にこじれた」五蔵の問題が存在しています。伝統医学の診察を通じて、それを解決するための最適な経絡とツボを選び出せることが伝統的鍼灸治療の真価であり、当院の強みでもあります。


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